「女子芸人」神田茜作(新潮社刊)
(第六回新潮エンターテインメント大賞 受賞作品)
絶賛発売中 定価1470円
人前で話すことが苦手なのに、
なぜか漫談家コトリになった琴音。
芸も恋も苦難の連続、すべてに行き詰まった彼女に、
師匠の一言から大きな転機が訪れる。
女の人生の悲喜こもごもなコトリの姿に共感。
そしてそんな中でも、夢に向かう力を発揮するコトリの姿が
まるで喜劇のようにも思える優しい物語。
企画自体を考え出したのは、演劇仲間が母になり、
「劇場にこれない」
ことでした。
演劇制作として活動する身の私にとっては悔しくて。
母になったら舞台にこれないのは物理的に当然ともいえるのですが、でも何らかのサポートができるんとちゃうか?その方自身が観たくないならいいのですが「観たいけど観れない」環境がもどかしく悔しい想いをしてました。
それと共に、母として幸せそうな仲間・仕事を成功させてイキイキしている仲間を見るのが情けなくて・・・。
なんだか正反対の気持ちでぐちゃぐちゃでした。
結婚する予定もない私は、夢なんてほっといて、就職してひっそり生きていこうと本気で考え就職活動の準備をしていました。
そんな時期ですから誰とも話したくないし、諦めてばかりだし、劇場にも行きたくなかった。
私は何がしたいのかわからず、もんもんと暮らしていました。
この作品と出会ったのは演劇をやめようとした時でした。
何気なく買った数冊の本の中のひとつが「女子芸人」。
ページをめくる度に私の頭の中で主人公のコトリが悪戦苦闘しながら生きる姿がはっきりとみえてきました。芸人としても、私生活もうまくいかないコトリ。本当に不器用で周りを羨んで自分と葛藤するコトリ。
でも、どうにかして前向きになろうと奮闘する姿が、コトリが生きていくことが私の元気になりました。
読めば読むほど引き込まれるこの世界をリアルに目の前で見てみたいと思ったのが舞台化のきっかけです。
こうなると「演劇をやめる」ってことが馬鹿らしくなってきてる自分がいました。「演劇をあきらめる」ことを忘れていました。
あの時の私は周りの目が怖くて、取り残されているようで、
期待されることも、期待されないことも怖かったようです。
周りがどうこう言うてるの勝手に気にして、グズグズ言うてる間になんかやったらええねん。うん。
なんか人とちゃうことやりたいならやったらええねん。
で、失敗したらまた違う方法でやったらええねん。
その覚悟を「いろいろあるから」って言葉で逃げないで「正面突破」するくらいの努力をせなあかん。
今ならそれができるかもしれない。もう一度ここに戻らせてくれたこの物語。
大切な大阪の地で、8月に華を咲かせたいと思います。
DOORプロデューサー 河口円